「割ばしから車まで」 秋岡芳夫

本書は、デザイナーの秋岡芳夫が書いた「物つくり」指南の本。副題は「消費者をやめて愛用者になろう」となっている。そして、「回収」「直し」が必要だと説く。初版が出たのは1971年であるから、はやくから「持続可能な社会」を訴えていた人であったと言える。現代人の多くは、米を作ったことが無い、浴衣も縫ったことがない、竹トンボも創ったことが無い。たぶん、一生何一つ作らないで死んで行く。生活者自身、生活技術を身につけ直す必要があるのです。

「美味礼賛」 ブリア・サヴァラン

本書は、フランス美味学の古典で、いわゆるグルメという価値観の始まりの書である。本書が書かれた1825年、パリでレストランというスタイルの飲食店が生まれた。貴族の邸宅でのみ食べられた「ご馳走」が、フランス革命を機にレストランという仕組みを通じて都市に浸透していく。今日のグルメブームはまさにここから始まった。そんな時代にブリア・サヴァランによって書かれたのが、この「美味礼賛」なのです。

「白夜の旅から」 森麗子 

本書は、刺繍作家の森麗子さんが北欧の国、デンマークノルウェースウェーデンフィンランドを訪れ、その時見た風景をファブリック・ピクチャー(糸と布の絵)に紡いだものです。ファブリック・ピクチャーとは、刺繍や織りを自由に組み合わせる糸と布の絵で、糸独特の風合いが醸し出す柔らかさが魅力のアートです。「リーベ河沿いの古い古い町」「船で行く白夜の国」「バルト海の大きな市」など美しいファブリック・ピクチャーが収められています。後半は、この旅の「日記」が写真と共に綴られています。

「父の有り難う」 長谷川まみ 文 / 小泉 佳春 写真

茶道具金工家である長谷川竹次郎が、ふたりの子供の誕生日に贈った愛情ある鍛金作品の数々を写真に写し1冊にまとめたもの。当時の思い出を添えて。
4歳の息子に贈ったウルトラマンのお皿とフォーク、大喜びで、それから食事はいつもその皿になった。3歳の娘に贈った「ままごとセット」、小さなポット、フライパン、ミニミニコップ。パチンコ台、文鎮、弁当箱、毎年いろんなものが作られた。20歳、最後の贈り物は茶箱、「娘は赤い更紗、息子は革で」。これは、単なる作品集ではなく、親子の愛情を綴ったフォトブックだ。

「食育菜園」 センター・フォー・エコリテラシー

本書は、学校改革を目的に始まった「エディブル・スクールヤード」の活動に献身的な力を注いだ人々の挑戦の物語です(1994年〜1999年)。カリフォルニア州バークレーにある荒れた公立中学校、マーティン・ルーサー・キング・ジュニア中学校。そこは、白人のほか、アフリカ系、ヒスパニック系、アジア系、イスラム系移民の子供たちが通う学校で、複雑な民族背景があり、いかに学校をひとつにまとめるかは常に重要な課題になっていました。そこで、このプロジェクトが始まり、大きな成果を挙げたのです。菜園作りと収穫した作物を使っての料理作り、そして皆で食卓を囲む。民族や文化の習慣の違いが、お互いを理解するきっかけを作る。その学習方法は、学校風土を一変させただけでなく、地域と連携し、地元の農家や住民ともつながり学校コミュニティの中心的や役割を担うプログラムになったのです。

「フランス料理を私と」 伊丹十三   

本書は、伊丹十三が辻調理師学校の先生にフランス料理を習い、その過程を事細かくレポートするものである。料理の過程を会話形式で伝え、カラー写真をふんだんに使う贅沢な作りの本なのです。そして、メニュー毎に異なるゲストを迎え、出来た料理を食しながら文化論を講ずる。ゲストも豪華、まずフランス料理を玉村豊男と語り、岸田秀と育児論、西江雅之言語学日高敏隆と進化論、蓮見重彦小津安二郎を語るなど、テーマ別に12の対談が載っている。伊丹十三のアイデアとセンスの冴えた1冊。