「魔法のことば」 柚木沙弥郎/絵 金関寿夫/訳

これは、「魔法としての言葉-アメリカ・インディアンの口承詩」(思潮社)の中の一篇、金関さんの名訳で知られる詩を絵本にしたもの。エスキモーの人々に伝わる詩で、星野道夫さんも好きだったものだ。
「ずっと、ずっと大昔 人と動物がともに この世にすんでいたとき なりたいと思えば 人が動物になれたし 動物が人にもなれた。」
ネイティブアメリカンの口承には、このような話が多い。人が動物と共に暮らしていたのだ。例えば、ポール・ゴーブルの「野うまになったむすめ」は、こんな話。嵐の晩、馬の群れに連れ去られた娘が馬たちと山で暮らし、1度は村に帰るが馬たちのことが忘れられず、また群れに戻った。そして、時が経ち、村人が探しにいくと、娘は美しい雌馬に変わっていた。本当かどうかは知らないが、かつて動物達と共に大地で暮らしていた人々は、それを信じる力を持っていたのだ。