「シェーカークッキング」 宇土巻子

1840年代、シルベスター・グラハム博士が、穀類と新鮮な野菜を中心とした食事の重要性を説き、肉類、コーヒー、酒、たばこなどの刺激物の摂取を控えるよう人々に勧めた。彼の説に共鳴したシェーカー教徒たちは、早速、実践した。100人単位の共同体での生活。それまで食事のたびに大量の肉を料理してきたシスターは、野菜料理や穀類、豆を使った料理、卵料理に工夫をこらすようになる。単調になりがちな食卓に変化をつけるため、ハーブを多用するようになる。これはシェーカー料理の大きな特徴。ハーブは、もちろん自分たちで栽培したものだ。(それまで栽培したハーブの多くは薬草として販売されていた。)高度な自給自足、100人単位の共同生活という特殊な形態がシェーカー料理の骨格を作り、豊かな野菜料理、ハーブと乳製品の多用、オーブン料理の発達という特徴を生み出した。
シェーカーたちは、自分たちが生産した食物に対して絶対的な信頼を持っていた。食品添加物や賞味期限を気にすることもなく、心をこめて料理する。「手は仕事に心は神に」、マザー・アン・リーのこの言葉が、シェーカーの暮らしを言い表している。
著者は言う、「私たちは、食べることに対していつも不安を感じている。この食材は安全なのか?カロリーは大丈夫だろうか?食に対する知識が増える度、不安は増加する。シェーカー教徒たちの食に対する健全な信頼は、私たちには眩しい。彼らの暮らしは、私たちの生活を見つめなおす手がかりを与えてくれるかもしれない。」