「ルイーザ・メイとソローさんのフルート」ジュリー ダンラップ&メアリベス ロルビエッキ/作 メアリー アゼアリアン/絵 長田弘/訳

若草物語」で有名なルイーザ・メイ・オールコットの子供時代のお話。ルイーザの父は教育者で、学校の先生であったが、教育方針に不満を持つ生徒の父母の反対で、学校経営が破綻する。それで、オールコット一家は、1840年マサチューセッツ州コンコードの町のすぐ近くに引越すことになる。当時、ルイーザ7歳。その町で姉のアンナの通う学校の先生が、なんとヘンリー・デイヴィッド・ソローだった。ソローは、その町唯一の大卒なのだが、世間の評判は、空想家のなまけ者。しかし、子供たちから見た彼は、「このあたりで最高のイチゴを見つけられる達人」。
ある日、ルイーザは、姉のアンナ達と一緒にソロー先生と「野イチゴ狩り」に出かける。そこで、樺の木で器用にイチゴの摘み籠を作ったり、フルートで素敵なメロディーを奏でるソロー先生。ルイーザは、そんなソローが大好きで、その後も「アルゴンキン・インディアンの民話」「毒キノコの上で踊る妖精」などの不思議な物語を聞かせてもらうのが楽しみだった。しかし、教育者の父から見れば「池の中の魚を調べたり」「動物の足跡を辿っている」、たいして建設的な行動をとらないソローは、単なる変わり者で、あまり評価されていない。古い道徳に囚われる大人に非難され、純粋な子供たちには好かれるソローって、なんて魅力的な人物だったのだろうかと思う。
その後1854年に名作「ウォールデンー森の生活」を発表し、彼の思想は、後の作家(いわゆるネイチャーライティグの)に大きな影響を与えることになるのだが、この本に描かれている、まだ全く無名のソローは素朴な野遊び好き青年といった印象で清々しい。この本を読んで、宮沢賢治とソローのイメージがピッタリ重なった。