「ぼくは くまのままで いたかったのに・・・」イエルク・シュタイナー/文 イエルク・ミュラー/絵 

冬眠していたクマが、目を覚ますと、冬眠前には無かった大きな工場が出来ている。そして、理不尽にも突然そこで働かされる。「ぼくは、くまです」と言っても認めてもらえない。クマというのは、動物園とかサーカスにいるものなんだという。なんだかわからないが、自動管理されたシステムで誰でもできるような仕事をさせられ、それが何の目的で何の工程なのかもわからない。とりあえず、毎朝タイムカードを押し、機械のボタンを押す。毎日、毎日。そのうち、使えないからクビだと言われる。自由の身になったクマは喜ぶが、でも何をしたらよいかわからなかった・・・。忘れていたものは・・・。
工場を後にして、雪の降る中をトボトボ歩いていくクマの後姿が印象的だ。ロード・ムーヴィーのワンシーンのようだ。本書が書かれたのは70年代後半で、文明社会の痛烈な風刺であるが、普遍的なテーマを扱っており、バートンの「ちいさいおうち」同様、今後も長くみなさんに読んで頂きたい1冊である。