「綱渡りの男」 モーディカイ・ガースティン

映画(マン・オン・ワイヤー)にもなった話。
1974年8月7日、大道芸人フィリップ・プティは、世界貿易センターのツインタワーの間に綱を張り、綱渡りをした。地上約400mの高さで。一度思いついたら実行せずにはいられない性格。彼は、仲間とともに完成間近のタワーに建設労働者を装い侵入する。夜中に屋上にあがり、弓で向かいのタワーに綱を飛ばし、じっと朝を待つ。朝日がタワーにあたりはじめた頃、フィリップはゆっくり綱の上に進み出る。
モーディカイ・ガースティンの描く「綱渡り」は爽快だ。まるで、空から眺めているかのような気分になる。フィリップは、約1時間に渡り綱の上を歩き踊った。警察官も止めることはできない。ショーが終った後、彼は待ち受けていた警察官に手を差し出す。裁判官が彼に下した判決は、「街の子供たちのために公園で綱渡りをするように」。いかにも70年代的なこの話が、僕は大好きです。