「セルフビルド」 石山修武/文 中里和人/写真  

セルフビルドへ誘うガイドブック。実例が身近でわかりやすい。ソローの小屋に端を発し、フラーに受け継がれるセルフビルドの思想も、そんなに難しく考えることなく、まず自分の生活に取り入れることだ。コンテナを組み合わせて作った「飲み屋」。コルゲートシートを張り合わせた「ドラムカンの家」。はたまた、隅田川の「ブルーシートハウス」、これに至っては、資材費0。たぶん、そのホームレスのおじさんに、ソローの思想など無いと思うのだが。(・・・いや、あるのかもしれない。)「500万ハウス」も紹介されている。これは、セルフビルドではないが、現代の「家作り」のコスト的な問題に正面から取り組んだ、非常にわかりやすい事例。物の値段の骨格を揺さぶる愉快な取り組みに拍手。
石山氏いわく、「高度経済成長期までの家作りは、大工職人によって支えられていた。政策としての高度経済成長は、その職人さんのネットワークを破壊してしまった。素晴らしくバランスの取れていた日本の住宅価格も破壊され、以降人々は家の問題に苦しむことになる。大工職人の歴史と比較したら新参者に過ぎない建築家たちは、その問題に対してあまり役に立たなかった。最近輩出しているフットワークの軽い住宅設計者は、大工職人たちの後継者ではないかと思っている。」