「子どもの文化人類学」 原ひろ子 

僕らとは異なった文化を持つ人達の生活を伝えてくれる本。たとえば、
カナダの北西部、北極に近いタイガの森で暮らすヘヤー・インディアン。彼らは、「はたらく」「あそぶ」「やすむ」をきっちり区別している。「はたらく」というのは、ムースやカリブやウサギを狩猟したり、毛皮をなめしたり、薪を取りに行ったりすること。「あそぶ」というには、テントでポーカーをしたり、おしゃべりをすること。そして「はたらく」や「あそぶ」の合間に「やすむ」。狩猟に出かける途中、前を歩いている人が突然止まることがある。その後ろの人は「おい、どうした」などとは言わない。前の人は「やすんでいる」から。彼は、守護霊と交信しており、その神聖な時間を他人が汚すことはない。しかも、一人ひとりが、マイペースで休みをとる。「あそんでいる」途中でも、急に横になり「やすみ」に入ることがあるが、誰も文句言わない。ヘヤー・インディアンの生活では、「はたらく」「あそぶ」ことより「やすむ」ことが最も重要とされているからである。