「雪の写真家ベントレー」J・B・マーティン/作 M・アゼアリアン/絵 千葉茂樹/訳

生涯を雪の研究と写真撮影に捧げたウィルソン・ベントレーの伝記。子供の頃、雪の美しさに魅了され、雪の降る日は、いつも顕微鏡で雪の観察、そして「雪の結晶は最高のデザイン」であると気がつく。その美しい結晶を写真撮影しようと、試行錯誤を繰り返し、なんとか成功を収める。しかし、当時、雪の写真など興味を持つ人間などおらず不遇の時代を送る。当然、そんなことでは飯は食えない、ウィリーは農夫として過ごす。その後、雑誌で発表した、雪についての文章や写真が学者の目にとまり評価を得る。その学者たちの援助により、ウィリーはついに「雪の結晶の写真集」を出版、その時、ウィリー66歳。今では、世界的な雪の専門家として名を残している。写真集出版、1ヶ月後に他界。
しかしこの話、1番興味を持ったのは、ウィリーが17歳の時に「顕微鏡付き写真機」を彼の両親が購入してくれた事実である。ウィリーの家は農家であり、決して恵まれた生活環境だったわけではない。でも、彼の母は、父は、ウィリーがどれだけそれをほしがっていたか知っていたし、彼の将来にきっと役だつものだと信じていたのだろう。その写真機、当時、乳牛10頭より値段が高いものだった。メアリー・アゼアリアンの版画による挿絵が出色の出来。