「アリス・B.トクラスの料理読本」アリス・B.トクラス 

二十世紀アメリカ文学を代表する作家の一人、ガートルード・スタイン、その恋人のアリス・B.トクラス。本書は、彼女が書いた料理本だ。二つの大戦に挟まれた激動の時代、ピカソマチスの絵画、プルーストジョイスの文学、ストラヴィンスキーやサティの音楽など、様々な芸術が謳歌した時代を生きた、アリス・B.トクラスという女性の感性溢れる内容で、その魅力は、エッセイとレシピを組み合わせたお洒落なスタイルに表れている。1920年代のパリと、アルプスを遙かに望む南フランスの小村ビリニャンを舞台に、二人の愛の生活と、二人を慕う友人たちの交友を生き生きと描写した本書には、芸術家の食卓を賑わわせた料理の数々が収められている。また、本書が、彼女自身初めて筆を取った作品なのですが、読者を強く惹きつけるのは、愛する人に先立たれたアリスにとって、「書く」という行為が、ガートルードへのオマージュだったからでしょう。